ACT61

文字数 551文字

大事なことを御幸に頼む。
「花瓶の花、隅にあるからよろしく頼むよ。彼女、今の心情で見たくないってさ。」

「ああ、確認済みだ。そっちで動きが有るまで、この件はこちらが引き取る。」
やはり、さっきの看護師は御幸の仲間だったらしい。

江尻が持って来て置いていった花の中に、1本だけちょっと目立つ青い花が添えられていた。

夫を襲った、もしくはその仲間かも人物だと知らない彼女は、その男性が花言葉なんて知らずにそれを混ぜてしまったと思ったらしいが、浅霧はそれも江尻の意図と思っている。

その花はスターチスだった。

ドライフラワーなんかでも人気の花だが、それは乾燥させても変わらないので、不変の愛という意味とかでも添えられたりするらしい。

しかし、彼女はできれば今、青い花はなんとなく今添えたくないという。

「青って少し、ネガティブな印象でしょう。元気になってもらいたいのに。それに、『不変』って「このまま治らないで」って言われてるみたいで…。」
と悲しそうに答えていた。

お見舞いに持っていくと言われたら、花屋で気を配れる人ならやんわりと外してくれる人もいるそうだ。

つまり、見舞いで持っていくと言う理由でも買っていないことにもつながる。

色々と考えずに買ったと言われればそれまでだが、一連の事を思うと知っていて添えたと思わざるを得ない。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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