その115

文字数 601文字

気分が少し良くなって、聞いている音楽の音量を少し上げた。

まだ頭の中に、あの雨の日の出来事と、ここ最近の出来事が浮かび上がっては消えていく。

せっかくの景色がその過去の映像でぼやけてしまう。

その嫌な感情をシャットアウトしたくて、僕はせっかくの景色の前に目を閉じる。

そうすると、昔から好きな音楽だけが僕の中を支配していく。

そう、この感覚。
このまま嫌なものを忘れてしまおう。

後少しで、今日僕がしたかったことのすべてが終わる。

目を瞑ったまま何分経っただろう。
ゆっくりとまぶたを開ける。

そこに広がる、普段じゃ見られない風景。

なんでもっと早く、こういう時間をと入ろうとしなかったんだろう。

よくよく考えると、僕は車が嫌いだった。

僕は車酔いをしてしまうタイプだったから。

だから、両親の実家とかへ行くのがものすごく苦痛で、途中何回も休憩しなければならず、ちっとも楽しめなかった。

だから、子供の頃の僕は普段はあんまり車に乗らなかった。
それでも、買い物とか短距離なら渋々乗った。

僕が小学校高学年になると、お迎えとかで必要になり母用の車を買った。

その車に乗ると何故か車酔いしなかった。

運転のせいではない。
むしろ、父親の方が運転はうまい。
なぜなら、タクシーの運転手だから。

しばらく理由がわからなかったが、ある日学校の帰り道。偶然、親父が通りかかった。

多分規定違反なのだろうが、帰り道だから途中まで乗せて帰るよと言って拾ってくれた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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