ACT45

文字数 878文字

業を煮やして
「そういえばいったいどうやって、中西氏の入院先を突き止めるんですかね。」
と、島田が聞いてきた。

「そういえばそうですよね、今、個人情報の取扱ってなかなか厳しくしている所多いですよ。」
と、三井も同調する。

浅霧は、ニヤニヤして聞いている。
楽しいらしい。

「結城さんは、どう思います?」
と島田から聞かれる。

なんて答えようか思いつかない。
どうにでもなりそうだし、どうにもならなそうだし。

でも、人と人だから上手く聞き出す方法はありそうな気もする。

「正攻法、かな…。」
と、どうとでも取れるような言い方をする。

自分でも、ちょっと逃げかなとおもいながらも。

「え、正攻法って?」
と、島田が食い下がってきた。

どことなく、三井も期待を込めてミラー越しに結城を見てくる。

それ以上思い浮かばなかったから、照れもあって
「島田、運転中。集中しろよ。」
と、言って、そのまま
「ね、浅霧さん。」
と、同意を取るフリをした。

「じゃ、全部宿題だね。」
と、浅霧はなんだか楽しそうだった。

マンションやアパートが立ち並ぶ道を抜けると、病院が見えてきた。
入り口の近くにバス停があり、何人か待機している。
この病院の利用者の多さがわかる。

駐車場に入ると、「あそこに止めて」と浅霧に指示され、島田は言われたところに止めた。

「結城は、そこの茂みで待機。コーン持ってね。あ、誰からも見えないようにね。
今から2人を連れて行くけど、しばらくしたら2人が車で去るから、直ぐにコーンを置いて、他の車が止まらないようにしてほしい。1回だけじゃないからね。」

「そんな事したら、病院の人に…。」
「大丈夫なように、今から許可もらうから。分かったら、まずそっと出て待機。」
といって、追い出された。

こう言われたら、もう指示通りするしか無い。

島田が開けてくれたトランクから、コーンを出す。
よく見ると、警察の名前の入っていないタイプだった。

茂みの中に見を隠す。

虫がいたが、意識から外さなければ長居出来ない。
仕方がないコーンを横において、見えないようにした。

この後、何時間ここにいなければならないのだろうと考えると、気が滅入ってきた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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