その47

文字数 558文字

心のなかで(お前、また絶対やらかすぞ)という声が聞こえた気がした。

昨日の二の舞はしたくない。

昨日のは、まだ自分のパソコンだったから最悪自分だけが泣けばいいが、今日のは会社の資産のものだ。

これを壊したら、弁償は無くても面倒な始末書が待っている。

それは面倒なので避けたい。

小一時間した頃、また集中力が無くなることが起きた。
飲み物を取ってきて、席に戻ろうとした時のことだ。

昨日から、時空を超えてきたかのように、いつの間にか島席に誰かが座っていた。

通りかかって気が付いた。

昨日、僕に声を掛けてきた人がそこに座っていた。
しかも僕がいつもの席に座れば、対面になる位置に。

僕がそれに気がついた瞬間、こっちを見るような動作を感じたので、気づかないふりを徹した。

なんだか、あまりに急なことで耳まで赤くなってしまった気がする。

すれ違いざまに観察したが相変わらず、仕事の道具らしいものは見えなかったように思う。

ただ、一応スマホをみていたので、もしかするとあれで完結する仕事なのかもしれない。

人はたくさんいるが知人のいないからこそのこの場所で、知り合いを作ろうとは考えていない。

だから、その人のことをこれ以上関心を持ちたくない。
無視しよう。

できれば店員以外とはこれ以上、ここでは話したくない。

その瞬間、色んな事がどうでも良くなってしまった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み