ACT37

文字数 726文字

つまり、家でパソコンをうっかり濡らしたとしても、直ぐに対応すれば故障させずに直せるかデータを引っこ抜くくらいまでは回復させる技量もある可能性があるのだ。

そんなやつが、ここまでしっかり壊すのはそのくらい慎重な人間である事が伺えるということだ。

他にも色んな、興味深いモノが置いてあった。

簡易の薬箱にしている中身と照らし合わせて、彼の行動等にそぐわないそれらのものに御幸は一つ仮説を立てた。

「本当に面倒なやつに目を付けられたものだな、中西は。」
未だに入院している依頼主を思った。

2週間も経つというのに、意識が戻らないらしい。
頬に出来たかすり傷のほうが先に治ったと奥さんが言っていた。

警察から、中西が死んでいないということが伝わったので、何かしてくる可能性がある。
と、御幸は考えていた。

それにおそらく、あっちにも何かしてくる。

まさか、自分たちが踊らされているとも知らずに、今日も普通に仕事をしていたりするのだろう。
江尻の手のひらの中で転がされているのに。

同じ日に、中西と同じ被害を受けた人間がいると知った時、直ぐに関係者情報を集めた。

個人情報とは言え、必ずある程度は人事部に関わるところで保管されているので、入り込めればデータは抜けてしまう。

そういう脆弱な部分は、日本の企業ではまだまだ多い。

中小企業に至ってば、パスワードを紙で配布してしまっているところさえ未だにあるのだ。

集めた後、いつものように一通り資料に目を通した。

そういうところを全部任せないのは、浅霧も御幸も似ていると思う。

事が実行され、2週間が経ち、1週間位でまずあの店に通うのを止め始め、1~2ヶ月後に職場を辞める等に仕向けていくと御幸は想定していた。

しかし江尻はまだ何か企んでいるように感じた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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