その33

文字数 698文字

「江尻、 何で電話に出ないとかはとりあえず、いい。何があった?」
僕は、警察の質問中、何度かスマホの振動を感知していた。

出るタイミングを逸したあとで、衝撃的な話を聞いてしまいどうにかこうにかここまで戻ってきたので、その間スマホの件は頭からこぼれおちていた。

「警察が受付に来ているっていう連絡があったのは聞いた。その足で、下に行ったっきり戻ってきたのは今。態度を見ればサボったとは思わないが、ことと次第によっては・・・。」
休職や退職もあるぞということか・・・。

でも、頭の中がぐちゃぐちゃ で、どう話しだしたらいいかよくわからない。

「なんだ、言えないことなのか?」
そのまま、少し沈黙が続く。

ここはゆっくり待つ ほうが懸命かと判断した課長は、僕が話を始められるまで待ってくれた。

数分経って、やっと僕が置かれた飲み物に手を伸ばして、乾いていた喉を潤して声を発する準備が出来た。

「・・・僕が何かしたとかじゃなくて・・・、その、・・・僕、ニュース見て無くて・・・知らなかったんですけど・・・、なんか、以前働いていたところの・・・その、・・・。」

「ん?ニュース?江尻に何か関係のあるニュースでもあったのか?」
ニュースになるというワードは、事と次第によっては会社や会社員にとってはの今後ことが左右される一大事だ。

落ち着いて聞くぞという課長のスタンスが崩れて、少し前のめりになってきた。

「お前、何かやらかしたのか?」

剣幕に気後れしそうだったが、何とか振り絞って
「い、いえ。僕は、何も・・・、その、警察の人の・・・話によると、・・・亡くなった人と怪我をした人が・・・僕の、その、元上司だったようで・・・。」

5月31日。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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