Disclose60

文字数 918文字

浅霧のその最大限の嫌味よりも、結婚していたことを指摘されたことに健太郎は驚きを隠せなかったようで、金魚のように口をパクパクとしていた。実に滑稽な表情。

人は驚くとそういう仕草をしてしまうのだ。

「べ、別にやましいことは何もしてない。だいたい何なんだあんたら。帰れ。もう話すことは無い。」

といって急に穏やかさが消えた。
でもそんな事で浅霧は引くわけもなく。

「そうですか?保険の外交員の方と懇意だとわかり、その該当者が亡くなっていると、面倒なことになりますよ。まだ、僕らの話のほうが簡略的で、しかも私は物分りが割といい方ですよ。」

としれっと言い出す。
まあ、たしかにあっちとは毛色が違う。多分、ウチらのほうが扱う分野が煩雑じゃない分、聞気出したいことは簡単だろう。

ただ、保険金殺害まで視野に入れていないとは言い切れない。
ただ、その分野には興味がないので、浅霧さんは聞きたい事が終わったら、簡単に引き渡してしまうだろうけど。と、結城は頭の中でつぶやいた。

最近ではテレビドラマのおかげか、執拗さの対比は警察外の人にも浸透してきたことは否めない。ただ、僕が言えるのは、テレビドラマ以上に彼らはしつこい。

税金で生活している以上、生半可な気持ちで仕事をしていないのだと思っている。

まあ、浅霧さんの一言で彼が一気に落ち着いた事を踏まえてもそういう事が伝達していることが分かる。

「私は、結果氏のことと、甫氏のことを聞きたいだけなんです。もう少しだけご協力していただけないでしょうかね。」
優しくでも決して有無を言わさないように伝えると、返事はなかったが健太郎はそっぽを向いたままの態度で落ち着いている。

「さて、話を戻しますが、夜中に話していたということをおっしゃられていましたが、どんな事を話していたかわかりますか?」

と、突然結果の話しに戻されて視線が泳いでいる。
人は、何かを思い出す時、視線が色んなところに飛ぶ。

「え、あ、なんだ…たしか、元気だとか。いつとか…なんとか。時々、なんかばっかみたいとか、ウケるとかなんか一人ではしゃいでいたときもあったかも。
でも、襖越しだし眠いのに騒いでるなあってふて寝していたから覚えてない。」
と言った。普通はそうだろう。普通は。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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