Discloseー31

文字数 662文字

それでも少しずつ、回復してきた気もしていたが父親がいないときに会いに行くと、お酒を飲んで一人で泣きはらしていた場面に遭遇したという。

その頃すでに、甫は今の会社に入社していてそれなりの実務経験などを評価されて安定したポジションで働いていた。

安定した仕事をしていない結果がいるので、結果が大学に通っていた頃ぐらい田村家は生活が苦しくなりつつあったのもあり、甫はまた多少の援助をしていた。

バイトと通院以外で外に出ない結果に元気を出してもらいたいと、ちょっと前に流行りだした、小型カメラが内蔵したアイテムを身に着けて行動するようになった。

そのカメラを通して、結果が自分も外を自由に闊歩しているという気分を味わえるように。

もちろん、仕事の気密漏れを防ぐため職場内だけは電源を切って行動したが、ほとんどの場面で甫がすることを共有できた。

打ち合わせ中などは電源を切っていたが、外回りで出かける行程中は電源をつけていた。

時間がある限り、極力歩くようにしていた。
そんなある日。
久しぶりに結果が甫の住む部屋にやってきた。

話したいことがあると言い出したのだ。

その日始めのうちこそ最近やる気に満ち溢れているというような内容で、兄としてホッコリとした気分で話を聞いていた。

甫からくられてくる映像がとてもいろんなイマジネーションを掻き立てられると言われて、甫はとてもいい気分になったようだ。

でも、そのやる気の源がまさかの内容だった。

「お兄ちゃん、私まだ眠れないの。お兄ちゃんも、前の会社の上司の人に恨みあるんでしょ?私と一緒にまとめてやっつけようよ。」
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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