その23

文字数 716文字

(ん? 歓迎されてない?)
質問した子が席を立ち僕の袖を持って少し離れた場所へと連れて行ってくれた。

「江尻さんですか?あの、警察の方が聞きに来られたんですけど、最初の2人組の方に1時間後にって私達きちんとお伝えしたんですよ。でもまたすぐにいらっしゃって・・・。」

(最初の?え?またすぐ?)

理解できていないうちに、後ろに人の気配がした。

振り返るとそこには男が二人立っていた。

一人は割と柔和な年齡不詳の、もう一人は多分笑えば爽やかな青年だろうが、仕事上仕方がないから厳し目の顔を作っているというような顔立ちの男性の二人だ。

お決まりの警察手帳を見せながら、
「北芝署の神田です。」
と言った。

写真と名前は同じだ。巡査部長とも書いてある。

もう一人も同じように手帳を見せる。
名乗りはしなかったが、『巡査部長・利根』と書いてある。
写真は同じ人だ。

北芝はここから近い警察署だったと思う。

「江尻甫さん?ですね。ちょっとお伺いしたいことがあって、参りました。お時間よろしいでしょうか?」
と、お伺いを立てている割には、断れない雰囲気だ。

なので、ちょっとムッとしたのもあり、
「ええ、構わないんですが、警察ってお忙しいんですね。さっき、1時間後ってお伝えしたと思うんですけど・・・。」
と、嫌味を言ってしまった。

「ええ、先程我々もびっくりしましたよ。まさか、我々以外も江尻さんに会いたがっているようなので。」

「え?どういう・・・。」

困惑して行き場のない不安から受付の子を見る。

彼女は彼女で
「あ、あのこちらのお二人は、1時間後にとお伝えした方じゃなく、また別でいらした警察の方で、私達もびっくりして・・・すみません、もう戻らないと・・・。」
と、逃げていってしまった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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