ACT44

文字数 723文字

結城は少しずつ管理官のみえる範囲からはずれるように動いた。

「三井さん、もうひとりの被害者ってまだ入院しているんだっけ?」
「あ、はい。サトウ商事の中西氏ですね。ええ、まだ入院中です。」
うんうんと頷くと、浅霧は管理官の方へと向かう。

つかつかと近づき、
「悪いけど、もうひとり借りていきますね。」
と布告し、島田を呼び寄せた。

管理官なムッとしていたが、何も言わずに右手でどうぞとだけした。

一人人員を多く預けるだけで、見えないところへ浅霧を遠ざけられるなら管理官にとっては楽でいい。

島田は、久しぶりに浅霧と組めると喜んだ顔をしているが、名前を覚えられてないと知ったら、さぞかしがっかりするに違いない。

コーン借りてくね。と、警備に立っている人に声を掛け、島田に後ろに積む様に指示した。

本当は中で手続きしてからじゃないと叱られるのだが、そんな事を浅霧さんに言っても、後で変わりに申請書書いて置いてと言われるだけなので、今は黙っておくことにする。

「さて病院へ行くよ。」
そう言うと島田が運転で、中西の入院中の病院へと向かった。

(御幸がプレッシャーをかけているからな、動くなら今日か明日だろう)
と、浅霧は考えていた。

「さて、君たちのおかげで江尻に中西氏が生きていることが伝わったわけだけど、彼がホシかどうかの違いってどうやったら直ぐにで「もわかると思う?」
島田はちょっと考えているが、まだ信号が多い地域なので浅霧の質問よりも、運転に集中している割合が大きい。

「江尻にさらなるプレッシャーを与えるとかですか?」
と、三井が言う。

「でも、それだと僕が犯人なら動きませんよ。」
と、結城は分かった口を聞く。が、それほど分かってはいない。

なぜなら病院に行く意味が分からないからだ。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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