その17

文字数 707文字

朝 、けたたましく鳴り響くアラームに起こされる。

スマホのアラームは、最近便利で使い勝手がいい。
学生の頃からのアラームは、もう何年か前からただの置き時計になっている。

その点、スマホのアラームは曜日限定もできるのが重宝する。

平日だけ。
木曜だけ。
週末だけ。

本当に便利だ。

その便利な機能のおかげで、平日だけ限定のアラームはきっちりと役割を果たし、昨晩の深酒でも容赦なく僕を叩き起こしたのだった。

もちろん、いつもの時間に。

気分が悪いと一瞬思ったが、適当に脱ぎ捨てられたスーツや靴下が目に入り、そんな気だるさにも身体が何とか反応して、邪魔にならないように脇に寄せた。

そして、テーブルに散らばって置いてある小銭に気づく。

一瞬、あれ?と思ったが、あ!っと思い当たる。

たしか、タクシーのおじさんに握らされたお釣りだ。

なんだかその小銭を見るだけで、財布に入れるのもなんだか煩わしくなって、じゃまにならない端に重ねて置いた。

昨日起こった事は、自信をもって何をしたのかは言えないが、どうやら現実のようだ。

カーテンを開けると、昨日の雨が嘘のように雲ひとつない青空だった。

とりあえず、脇によけておいたスーツを週末用に袋に投げ込む。

あ、そうだ・・・カバン。

濡れてしまったかばん は、あの女の人が拭いてはくれたらしく、ベタつきは無いけど、中も濡れたし、それに悪い思い出にまみれたからもう使いたくない。

土曜の朝が燃えないごみの日だから、捨てよう。

クローゼットを開け、何年か前にお役御免になったのに、捨て忘れたかばんを探し出し、濡れないように買い物袋に詰め替えてた一式を古びれたそのカバンに詰め替えて、何とかいつもと同じ時間に部屋を出ることが出来た。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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