ACT34

文字数 659文字

伝票を取ろうとしたら御幸が先に取り上げた。
払ってくれるらしい。

そう言えばいつだったか、経営者としてはこういう領収書を集めるのが大変なんだ、と言っていた。

表向きには健全な会社を取り繕うのは、どんなやつが会社を経営してても同じなのだ。

高橋が気がついて出て来てくれた。

「領収書を上様でお願い出来ますか?」
「はい、承知しました。」
そう言って、高橋は準備してくれた。

「ここ、いいだろ。俺の秘密基地なんだ。」
「うん、わかる。僕も入った瞬間から気に入ったんだよね。またそのうち、お前抜きで来ようかな。」
それを聞いて、領収書を書き終わった高橋が
「ぜひ、お待ちしています。」
と言った。

社交辞令の笑みを添えて。

俺が「じゃあな。」という代わりに、軽く手を上げると、同じ様に手を上げて、さっきまで俺たちが座っていた席に向かった。

御幸とは外にある灰皿の前で、タバコを吸いたいからと立ち止まったのでそこで別れた。

署に戻って、「HIROBA 東丸内店」に面が割れていない人員を入れて、利用者の名簿と顔写真が取れないか班長に打診した。

班長が手を回してくれて、名簿を手に入れてくれることになった。

その中から、江尻と同時間帯で利用している人間をピックアップしてもらうことになった。

中に入ってもらう人員にも条件を出した。

班長はいぶかしがって
「なんでわざわざアイツラを?」
と言ってきたが、理由を聞いて少し納得して渋々それも対応してくれることになった。

そのへんの作業には時間がかかるので、若手に任せてまた浅霧は一人、考え事をしていた。
外は、今日も雨模様だった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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