Discloseー55

文字数 616文字

家にいることを知っていて押しかけてきたのだが、そんなことをおくびにもださず言う。

「ええ。一応、3日仕事したんで今日は休みにしました。こればっかりは長年のリズムっているのがあって、独立してもなかなか変えられなくって。」
と言って、頭をかいた。

会社に所属せず、タクシーなら流しでも仕事を得られるので世間のバッシングがあっても知らずに乗る人が殆どで、叩かれることもなく仕事ができているようだ。

甫が逮捕されたニュースはもちろん新聞でもテレビニュースでも取り上げられていたが、容疑者の段階で結果は亡くなり、しかも江尻姓の共謀者が『妹』となっていたので、田村健太郎と結びつけたネット上の書き込みは多少あったものの、今の所はこの家はバレてないようだった。

「どなたか、いらしているんですか?」
と浅霧が花をさしていう。結城じゃなかなか踏み込んで聞けないところだ。

不意をつかれたその質問に、
「ええ、まあ…。」
と渋々答え
「それ飲んだら、もう帰ってください。子供はいなかったと諦めて静かに過ごしたいんで。」

と、言って台所の方へと行ってしまった。すぐ目の前が台所で、隣にもう一部屋あるだけの小さな平屋だ。換気扇を回し、健太郎はタバコを吸い出した。

「今日お伺いしたのは、お線香もありますが最後に確認したいことがありまして参りました。吸い終わってからで構わないので、ここで少しお話を伺ってもよろしいですか。」

と、伝えると二口目を吸ったところで火を消し、戻ってきた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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