ACT57

文字数 579文字

浅霧は、後ろから彼を追うことで先日尾行した際の歩き癖と後ろ姿で江尻だと確信した。

「とりあえず、署に戻るのはもう一箇所寄ってから考える。」
そういって、三井を連れて歩き出す。

最後に向かった先は中西の病室だった。
中西夫人は驚いていた。

さっきまで一緒にいた三井を伴って戻ってきたので、不思議そうにしている。

「あら、浅霧さん。まだなにか?」
さっき来た時になかった花束が、座っている側に置いてある。

質問に答えずに、分かっているのに
「どなたかいらしたんですか?」
と、聞いた。

「ああ。ええ、まあ。取引先の方のようでした。」
と、浅霧が見ている花束の方へと目を向ける。

「花、花瓶に移さないんですか?」
と聞くと、首を振っていた。

理由を聞いて納得した。

「すみません、実は後で色々とお願いすることが出来ました。その前に、その花束預からせてください。」

どうぞ、というのを確認し三井に花を入れておける物を借りてくるように行かせた。

数分後貸し出し用の花瓶を借りてきたので、手袋をして外装をきれいに取り、手袋ごと三井に渡した。

花の方は、花瓶に適当に差し込んだ。

念の為ということで、名刺を一枚出し、全部の指で触ってもらう。

少し不安そうに言われたまま、言われたことを熟してくれた。

三井はあえて理由を聞かずに両方受け取る。
念の為確認したが、カメラや音声装置はなかった。

活けた花は床に花瓶ごと置いた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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