その93

文字数 464文字

流石に病室の通路は明るかったが、階段から近いこともあり中西の病室へつくまで誰とも遭遇しなかった。

まあ、お見舞いの時間も過ぎ、早すぎる病院の夕食時間も過ぎたようなこの時間にあんまり出歩いているの人はいないんだなと思いながら周りを見回した。

中西のドアの前で、ノックをしようとしてあることに気がついた。

ドアには透けてはないけれど、10cm幅の四角いはめ込みの半透明の窓が付いているのだが、隣のところは中が明るかったのに、中西の部屋から漏れている明かりは、そんなに明るくない。

もしかすると、先日いた奥さんも見舞いの時間が過ぎ、中西はまだ眠ったままなのかもしれない。

なので、ノックもせずにそっと中を覗くと、思ったとおり奥さんの姿はなかった。

小さい声で、失礼しますといい部屋に入る。
どことなく消毒の匂いがする。

窓際の棚を見ると先日、見慣れた花が花瓶にセットされていた。
僕があの日持ってきた花束だった。

1本だけ替えてもらった青い花が、暗闇の中で薄暗い照明のなかでも主張している。

むしろ、このくらいの照明のほうがその凛とした美しさを放つようだ。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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