ACT47

文字数 910文字

2人は様子を伺いながら入り口へと向かった。
数メートル離れたのを確認して浅霧は後を追った。

受付の前を素通りし、中に入ると指示通りに三井と島田は別れて行動し始めた。

遅れて入った浅霧は受付の先の広い待合室を見ると、上手く気配を消せそうだ、と感じた。

それに今から動いたほうが、万が一彼が警察の人やそのた彼を知っている人間と遭遇しても、こんな彼の家から遠い病院にいる理由を付けやすい。

今日を含めて3日以内で、ここにたどり着くだろう。と、密かに思っていた。

浅霧に視線を送っている人間の気配がする。
どうやら御幸の関係者もいるようだ。

島田の後を、離れすぎない様に歩く。

エスカレーターが中央にある大きな病院で、そこだけ吹き抜けだ。

見失うことも無い代わりに、見張りを入れたら、その階にたどり着く度にどこまでも見渡せて、勘がいい人間なら病院関係者や患者に関わる人間じゃないやつだとわかってしまいそうだ。

警官の配置をすることになったら、少し工夫が必要だなと浅霧は考えていた。

まあ、諸々準備が出来て配置するまでは御幸が何とかしてくれそうだが…。

エスカレーターを登りきり、病室の続く階の個室の一つで島田が合図してきた。

向こうまで通り過ぎるように合図を送る。

島田は中に入らずに、向こう側へと突き進む。
その先に階段があった。

階段の所へと入り、通路から見えないところで
「君さ、この階段から下に行って三井さんと合流してくれる?そしたらあとは指示通りに。」
そう言うと、島田は言われたとおりに下りていった。

浅霧は、一旦中西の病室へと戻った。

コンコン。
ノックをして入ると、誰もいなかった。

ふと、中西の顔をどこかで見たことがあるように思った。

もちろん、借りてきてある写真は見ているのだが、普段被害者の写真はまじまじと見ない方だし、会社の慰安旅行か何かのスナップでそのへんの同年代のおっさんが一人しか写っていないモノを見るくらいなら、容疑者の顔を写真を見なくても覚えられるくらい見ている方が有意義だからだ。

もちろん、集合写真なら別だ。
他の情報が沢山ある。

ともかく、興味がない相手はあんまり覚えていないのだが覚えているということは、どこかで少し興味を持った相手らしい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み