ACT23

文字数 740文字

その数時間後、今度は西品署の管内で同じように階段から転落した人が病院に搬送された。

こちらは目撃者こそ居なかったが、倒れている被害者を見つけた人が救急車を呼んだ際に、「押された」という被害者からの言葉を駆けつけた警察官に伝えた。

実際は「・され・・た」というようなニュアンスだったらしいが、階段と結び付けられ、「押された」ということだろうと検討をつけたらしい。

こちらの被害者は今も意識が戻らずに都内の病院に入院中である。

この時点では、各所轄でそれぞれ聞き込みをしていき、容疑者のピックアップをしていた。

被害者は、北芝署のほうが、株式会社カブトの開発部門の森宮課長で、死亡。

西品署のほうが、サトウ商事の企画課の中西課長である。

森宮氏の方は、いくつかハラスメント案件で人事部が認識していたようだが、経営者側の関係者だったらしく、表面化されてないだけでかなりの人数の容疑者が上がってきた。

北芝署の利根が
「聞き込みだけでも、容疑者が30人くらい上がってきていてます。まだ、完全に絞り込めていません。」
と言っていた。これ以上にも増える予想をしているという。

もう一方の中西氏は厳しいという面で、嫌われていたようだ。

「もともと全般的に厳しい人だったらしいのですが、若い人からすると、課が大きくなってセクションリーダーの意見しか聞かないイメージで、耐えられなくなって辞めた人もいる。という意見も上がり、10数人の容疑者の名前が上がっています。」
と、島田が報告した。

その聞き込みの中で、5月の半ば頃辞めた社員と思われる人物と揉めていたという証言を得た。

しかも同時期に、である。

それがKSCの江尻甫ということがわかり、どちらの署も偶然同日に聞き込みに行ったのだった。

そこに浅霧と結城が出くわしたのである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み