その14

文字数 656文字

タオルでざっくり・・・いや、一応念入りに拭いて、用意された服を着て、肩にバスタオルを掛けて脱衣所を出た。

シャツとパンツ、靴下は履き心地が新品だったが、スウェットは新品ではなさそうだ。
まあ、そこまで詮索をしなくてもいい・・・か。

脱衣所を出るなり、
「本当にすみません、こんなところまで来てもらって。とりあえず座ってください。」
と言われたので、ダイニングの中央にあるテーブル前に行き、そこの椅子に促されるままに座る。

2脚ある椅子にはもしかすると、誰か座る相手がいるのだろうが今日は、僕がいるから座れない。

いつもの主人じゃなく申し訳ないと椅子に向かってちょっと心のなかで謝った。

「と、とりあえずこれ飲んで、待っててください。」

と、どうやら服と一緒にビールとかも買ってきたらしく、目の前に簡易スナック化された光景が拡がっている。

そして、僕の前には500mlの缶ビールと飲みやすい形のコップが置かれていた。

「足りなかったら、冷蔵庫にまだあるんで。」
と言って、飲むとも言っていないのに、缶を開けてグラスに注ぐ。

頭の中で
(仕事がまだあるんだけど・・・)
と思いつつも、こんないい思いが出来そうな日もないかもしれないと、半ば仕事のことを忘れ、注がれたビールを飲むことにした。

飲んでくれると見届けたら、彼女が脱衣所に入っていった。
よくよく見ると、彼女の分のグラスは出ていない。

あっけに取られていると、中からシャワーのお湯の出る音が聞こえる。

どうやらシャワーを浴びるようだ。

そういえば、脱いだままの物が置きっぱなしだと言うことに気づく。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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