その11

文字数 612文字

なぜか、 彼女もその後を追ってきた。

改札から少し離れて、隣接したモールの入り口の当たりまでおいかけてきて
「せめて、お詫びをさせてください。」
と、言ってきた。

何も発せずに電車を飛び降りてきたから、何かお詫びをしなければと思ったのかもしれない。

僕がただいたたまれなくなったということは、わからないから。

「どうせ雨でこの後、家に帰るまでに濡れるし・・・」
と固辞しようとしたが
「せめて・・・」
と泣きつかれてそのあと二人でどういうわけか彼女の家に行くことになった。

ベタベタな服のままだったのに、無理やりタクシーに乗せられた。一応、彼女が持っていたハンドタオルをシートに敷いて。

運転手のオジサンは、そんなことには全く気づいていないのか、どちらまで?と杓子定規に聞いてきた。

女性が早口で行き先を告げている。何となく聞いたことのあるような地名だが、そこが何処なのかなんて想像も出来ない。

知らない場所へと連れて行かれれる恐怖は相手が女性じゃなかったら、気を失ってしまいそうな緊張感だった。

この自分のせいじゃない理由で身にまとった匂いに申し訳なくて、運転している人から遠い方へと視線を向ける。

雨の当たる窓の外、途中通り過ぎた歩道橋 がある場所は見覚えがあった。

その時は気にも停めなかったけれど、上を歩く人影を見たように思う。

多分ここは、歩いて帰る時に渡る信号の少し先のところだと思う。定かじゃないけど。

タクシーは更にそこから、数分走らせられた。
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