その3

文字数 703文字

滑り込んだ 駅へと続く通路は、雨の匂いが充満している。

最近、昼夜問わずにゲリラ豪雨と言われる強い雨が、春から夏にある。

時々秋にも。

しかも、限定地域で発生するらしいから、これも運次第だ。

地下へと降りてとりあえずは、その雨からは解放された。

いつもどおりの通路は、かなりの人が行き来している。
そして濡れた傘を大勢が持ち歩くから、通路は少し滑りやすくなっている。

所々に施設で傘を入れられるビニール製の袋もいくつか落ちていて、不覚にも少し水を多く貯めて落ちていたそれを踏んでしまい、中の水が飛び散って更に靴と靴下を濡らしてしまった。

(もう少し我慢して店にいればよかった)と後悔するころには改札前に着いていた。

改札付近で今度は、何処に定期入れを入れたか分からなくなって、少しあたふたしてかばん中を弄(まさぐ)る。

慌てている中でも、視界の端々に駅を行き交う人々が映っては消えていく。

かつてのビジュアル系バンドとかいうジャンル以降、男性にも化粧やマニキュアをする人が増えた。

そして、いつの間にかそれが特別なところから一般社会に降り立ち、街で見かけても、避けて通るところから自然なものに時間を経て変化してきた。

そして、最近では顔からして中性的で男性なのか女性なのか分からない人がSNSなどの影響か、それともそうやって育てられてきたのかわからないが、そういう人がまた少しずつ増えてきて居る。

しかも目立つ色味の服装などを好むのか、余計に目につく。

この駅でも最近そういう目につく人がいて、昨日の朝見かけた子がすぐ近くの壁に寄りかかってスマホをいじっていた。

心の中は別として、服の趣味に関しては僕には一番遠い世界の人だと思っている。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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