ACT33

文字数 526文字

「そうだ、この前なんか買いたいものがあって店に寄ったんだよ。そしたら、偶然に愛しの人に会ってね。いや、いよいよ飽きないよ。」

御幸がニヤリとしている。

「なにかいいものがあったのかい?」
「いいものが有りすぎて目移りしちゃったから、買わなかったけどね。」
と言って、手元で小さくピアノを弾くような仕草をした。

パソコンか何かに注視しろと言いたいらしい。
たしか、彼はIT系の仕事をしていた。

「あとさ、遊びに行ったらいいものを見つけたんだ。」

浅霧は少し表情を変えた。
「ふーん。」

既に、御幸はやつの家に入り込んだらしい。
そして、色々と見てきた。

珍しい、この手の事は普段言わない。

「荷造りが始まってた。色々と周到だよ。」
俺の目から視線を外さずに言う。

住居侵入はれっきとした犯罪行為だ。
それを自分から言い出したのは、それなりに理由がある。

署に帰ったら、直ぐに動かなければならない。
こんな時間に呼び出した理由は、早くしろということなのだ。

「あの子、離しちゃダメだよ。すごい子だから。」
「ありがとう、そうするよ。」

コーヒーがもう殆どなくなってきた。
メロンソーダも、いつの間にか殆どない。

「そう言えば、あっちは?」
「いつもどおりさ、変わんないね。」

それで話す事が済んでしまった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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