Discloseー61

文字数 669文字

「そういえば、兄妹二人の関係性って知ってましたか?」

また話を変えて翻弄する。

同じ方向から話を進めず、相手に考える余地を与えない話し方を浅霧はよくする。

案の定、健太郎は突然のことで戸惑っている。

「…さあね、良い父親じゃなかったから、知らないんだ。あの二人がやったことで責められても、よく知らないんですよ。」

まあ、たしかに二人がやったことではある。親子、兄弟であっても本来の罪は本人だけのものだ。

環境のせいだとすれば、家族内ではなく地域やコミュニティの問題でもあるように思う。

何か変だと親が気づいても、相談できる場所があれば事が起きる前に対処できる。

親が相談し、周りがサポートしそれでも難しいなら、専門家が対応する。

その過程を恥部とせずに、公にすることで未然に防げるはずなのだ。
尊い誰かの命を失う前に。

まあ、そんな事をこの日本で望みたいならあと何十年も後に実現するかしないかという内容の様に思う。

「その一般的な意見はこの際置いておいて、彼らの主従関係についてです。」

「ああ、甫は何だかいつも結果の言いなりだったからな。」

「ああ、それはご存知なんですね。」
そう言ったときの健太郎の反応は、しまったという感じに見えた。

どちらが主でどちらが従かを知っている。
少なくとも、多少なり関心が無いと気づけない。実際、甫本人は従と認識していなかった。

結果が江尻家に馴染めなかった時、手助けできなかったという負い目はあったらしい。

こっちの姓に戻って、少し引きこもり気味だったと感じ、外との世界を橋渡しするつもりで、甫は動画を撮りそれを結果に対して配信し始めた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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