その46

文字数 566文字

昨日あんなに他人の目が気になる午後だったのに、今日は終始頭の中はパソコンのことでいっぱいだった。

まあ、それでもなるべく話しかけられる隙きを作られたくなくて、職場では久しぶりに食べながらパソコンとにらめっこしていた。

僕は、今日はここから動けないくらい忙しいというスタンスを見せるために。

でも、半分はそうでもしてないと、こんな僕でも多少はコミュニケーションを取る同僚に昨日のことを聞かれそうで、それを敬遠したかったというのもある。

あえて表情もちょっと怖目にして、極力誰とも目が合わないように心がけた。

そのお陰か、休憩中にも全くといっていいほど誰も話しかけてこなかった。

幸い、今日は会議がなかったのも大きい。

会議だと、ここの部署以外の同僚とも顔を合わせなければならない。
会議の前後のほんの一瞬にスキでも見せたら、話につかまる可能性がある。

でも、そこまでしてもいつもより作業が進まなかったことは確かだ。

それだけ頑張っても、今日は集中力が皆無といっていい。

四方八方に気を向けていて、見られていないのに視線を感じる強迫観念が始終付きまとっていたと思う。

そういうこともありこの場所で、昨日と同じ場所に陣取り、足早に飲み物を取りに行き、ここでも見えない壁を作りつつ持ってきてパソコンの近くにおいて作業を始めようとした。

が、そこでまたハッと思い出す。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み