ACT80

文字数 537文字

マスターがそんなことをしている脇では、テーブルに置くやいなやすっと浅霧の手が伸びた。

結城が一番おいしそうだと思っていたものだった。

パクっと口に入れると、左手で合図する。

どうやら続きを話せと言っているようだ。

「お互いを認識しているかどうか、というのも気になります。」
その仕草にすぐ反応して三井が言った。

さらにかばんの中からタブレットを取り出す。

捜査資料の一部は支給されているタブレット端末で見ることができる。

「資料によると、それぞれに勤務期間はほんの数日しか被ってない・・あ、いや、その数日も彼は在籍を確認出来たけど、実際勤務はしてなかったようですね。」

「そういえば、うちの兄貴がこの前転職したんですけど、家にいることが多くて聞いたら、有給消化をしてるって言ってましたね。それですかね」

「わー、辞めるとかになったら、そういう発想できるかな。」
不意に余計な一言を言いだし、結城は浅霧に睨まれた。

頭だけ、ペコリと下げる。

「今思ったんですが、この三人ともIT系の中でもエンジニアのグループのようですね。江尻はカブトではSEでもマネージャーが最終職位になっているので、社内のインフラとかも立場上精通していたかもしれませんね。」

入社して数年で頭角を表していたくらいの実力者ということか。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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