ACT39

文字数 863文字

つまり、予想通りまだ江尻は何かを企んでいて、未実行か実行中なのだ。

さも普通を装っているが、何かを仕掛けようとしていた殺気が消えた気がした。

今回は、ほぼ何も情報を持ち合わせていない業務用のスマホを今日は持ち歩いている。

Wi-Fiスポットを探す。

結構な人が近年、実際の事件やとんでも設定の関係で、セキュリティを考えた行動をする人が増えてきたと思われるが、まだまだな人も多い。

SSID名も、フリーを使うほうが怖いと思っているのかテザリング機能で自分のを使っている人も多いが、まだまだ自分の名前が表立って出てしまっていることに気づけない人もいる。

まあ、それを見越して、あえて変なネーミングにしている人もいるが。

その中で、数人そういう仕組をしっかり理解して利用していると思われる表示の人間がいるようだ。

それを確認していった先で、SSID名で誰かを特定していくことができた。

彼はもしかすると、俺がそれを探っていることも警戒しているのかもしれない。

今日は、1時間もしないうちに帰り支度を始めた。
外で待機しているやつに、彼が出ることを伝えると、了解の返信が来た。

今日は、警戒されて終わりかと思っていた所に近くの大手家電店に入ったと連絡を受けた。

パソコンコーナーで物色が始まったのを見計らって、念の為接触を図ってみることにした。

そのせいもあって、ほんの少しだけ警戒心が緩んだようだ。

まあ、仲良しになりたいわけじゃないから、この程度警戒を解いてもらえたら、あと1~2回くらい接触出来るだろう。

浅霧だけに、このなかなかないスリルを味あわせるのは勿体ないから楽しまなくては。

なんせその日はまだ江尻にだけ焦点があてられていなかったようなので、警察の気配はしなかったから。

そういうのもあって、今日、浅霧にあのカードを見せたから今日以降動き出すかもしれない。

まだやつが利用し続けてくれればいいが。まあ、と接触出来なくてもあっちに気づいてくれればいい。

とりあえず、置いた布石のその後に思いを巡らせ、消したタバコを自分の携帯灰皿に放り込んでとおり雨から離れた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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