ACT50

文字数 740文字

正直、さっき顔をみて細君を見るまで思い出せないくらいの接点しか無い関係性。

つまり俺はあんまり彼らのことを知らないのだ。

ただ、その少ない記憶の中でも正義感が強かったように記憶しているのは、御幸のことが好きな理由が公平で対等に感銘を受けているからだと言っていたからだと思う。

当時の大学の存在は、就職難の波を超えた頃で大学生という響きがアクセサリー化していた。

まだまだ、安定した公務員を希望する人もいた。

浅霧は、どこかの場で
「大学を出たらその足で警察学校へと入校するつもりだ。」
といった事があるから、その時に御幸の方が向いているという趣旨の発言の発端が彼で、その理由だった気もする。

波及して、また他の誰かが若干強面でガタイもよく当時、学生達が浮かれていた中でも、割と規律を重んじるタイプだった中西のほうが向いているんじゃないかといいだし、その時の浅霧の少しだらしなくなりかけていた体つきと比較して、そうかもな…と思っている自分がいてもおかしくない。

その時にまじまじとこういう人物像が、一般の求める警察官の偶像なのかと思った事を思い出した。

1階まで下り、立ち止まらずに施設を確認する。

事前にこの病院へ車で施設の案内図をネットで確認していたから、念の為の確認と言ってもいい。

救急センターの近くに検診センターがあり、それぞれに入り口がある。

検診センターの側の出入り口から出るとさっき島田達と入った受付の近くに出た。

そこには検診センター入り口と書いてあった。

そこを含め周囲を一通り確認して、また中に入り階段でさっき確認した踊り場の所まで戻った。

待っている間、この階段を利用したのは歩行訓練をしていた1人だけで、極力人目につかないようにするには、行きか帰りにこっちを通るだろうと浅霧は考えていた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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