ACT98

文字数 1,028文字

本間の家の近くで車が借りられていたというのに、結局なんの成果も得られずに終わり、署内はピリピリとしたムードに包まれていた。

しかし、そういうのが嫌いな浅霧さんについて回っているからそういう雰囲気に飲まれることもない。

ただ班長からの再三の呼び出しを無視し続けるという、先延ばしにすればするほど地獄がまっていることを僕は浅霧さんに強いられていた。

三井へと出していた宿題の結果に割と満足している感じだったが、肝心の本間も江尻も行動がつかめていない。

さっき、サイバー課から本間の名義で明日の朝から1時間だけ予約が入っているということで、今度こそということらしく、見張りが増員され近くの署からも応援で駆り出されたと班長のメールには書いてあった。

しかし、その1時間の予約について浅霧は一言
「ほかの業者のも確認して。」
と三井と島田に言い放つと目をつむったままふんぞり返っている。

二人は言われたままに、サイバー課へと出向いて行ったのが15分ほど前だ。

彼らからの連絡を待っている。

そんな瞬間に、結城の携帯が鳴った。

「島田です。他の会社にも見つけられません。別の時間帯も見てもらってますが、回答待ちの状態です。」

「・・・だ、そうですが、浅霧さん。」

「そろそろ返却された駐車場周辺の防カメの映像も届いている感じだよね、タブレットに飛ばしてって言ってもらえる?」
とやはり目を瞑ったまま言うので、同じように伝えると「了解です」と言って電話が切れた。

駐車場のすぐ近くの映像はなかったものの、近くの環状線へとつながる付近の映像が少しずつ集まってきているようで、届いたものから片っ端に浅霧は流し見している。

そんななか、一つの映像のところで停めた。

幹線道路沿いのコンビニの映像だ。狭い路地から、車が一台出てきて左折して去って行くところだった。

「ね、これタクシーだよね。」
よく見ると、屋根になんか付いているのでタクシーっぽい。

結城が映像を広げてみている間に浅霧は地図アプリでコンビニの場所を確認している。

「近いな。」
と、駐車場から近いことを確認している。

タクシーは普段よく街なかで見るようなオレンジ色やグリーンとかの感じじゃない。

もしかすると、個人タクシーなのかもしれない。

「これ、調べさせて。」

「あ、アレ付いているかもしれませんね。」
車載カメラは業務用の車にはほぼ付いている。

「それもそうだけど、ちょっと気になるこのタクシー。」

その浅霧の懸念事も踏まえて島田経由でサイバー課へと伝達を頼んだ。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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