その109

文字数 723文字

御幸が僕を油断させておいて、付いてきているかもしれない。
そもそも今日あの場所で会ったのも偶然じゃなく、僕を尾行してきたのかもしれない。

不気味なのは、警察の人じゃなさそうだというところだ。

名刺くらいもらっておけばよかった。
仕事であったわけじゃなかったから、すっかり失念していた。

バックミラーを確認しつつも慎重に走る。

わざとちんたら走って、ついてくるようなら高速降りてからまけばいい。

ついてこないことがわかれば、ドライブ再開だ。

そう考え、制限速度を守って様子を見ることにした。

駐車場を出るときに、同じタイミングで出発した車はいなかった。でもまだ安心はできない。

案の定、自分以外でその時速で走るのはタコメーター付きのトラックの運転手ぐらいで、普通自動車はほとんどいない。

それでも、何台かはその速度で僕の後ろを走っている。

一台は、軽自動車。
僕をもし付け狙っているとしたら、軽じゃないと思う。

その後ろは、白いミニバンと呼ばれるタイプとシルバーのセダンと呼ばれるタイプのものだ。

そのままの速度で走っていると、シルバーの車はしびれを切らしたのか、とうとう追い越し車線へと出て、トラックを含めて数台抜かしていったようだ。

オートバイも数台通り過ぎていく。

最近は安全性の観点か、フルフェイスの人が多いので判別つかないが、イメージで御幸とオートバイとかが結びつかないから、追尾してくるなら車だろうと思っている。

もう一台、僕を含めた数台を抜かす車が現れた。

後少しで、千葉に入ってすぐのインターだ。
今抜かしていくということは、多分関係ない人のはずだ。

ただ念の為、僕の車を抜かす瞬間目だけ右を見たが、女性が一人で運転しているようだった。

(よし、違う。あとは、白い車・・・。)
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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