ACT82

文字数 811文字

「結城はさ、俺を大嫌いだ、殺してやりたいと思ってるだろ?」

二人が仕事をあてがわれて出ていってしまい、4人席横並びが窮屈になったのでいなくなった二人側のほうに動いたタイミングでそんなセリフを言われた。

「お、思ってませんよ。」
突然振られて、どもってしまった。

「まあ、管理官も俺を殺してやりたいと思っているだろうから、容疑者となる人物は他にもいるけどな・・。」

「だから思ってませんって。」
あー時々めんどくさい・・・。と結城は思っている。

「誰か殺してくれないかな、そんなときに、結城ならどうする?」

「だから、おもってませんって。」
「思ってなかったら、例えろ。」

あ、なるほど・・・と、思ってから数秒逡巡する。

「うーん、誰かを殺したいほどって思ってたら警察官してませんね。でも悲しいかな、今まで捕まえてきた奴らは自分でやるか自分でやって誰かがやったことに仕向けるか、誰かがやってくれるように仕向けるか・・・。」
そこまで言って、残っていたお菓子に手を伸ばす。

「俺は、その3つ目をあいつがしたと思っているんだよね。」
お菓子を口に入れる瞬間に手が止まってしまった。

「え、誰に誰をですか?」

「あいつが残りの二人を、だよ。他に登場人物いると思ってるんだ?」
小馬鹿にされた。

「え、だって面識ないですよね。」
想像がつかない。

「だから、今危険だと思っている。いや、もう遅いかもしれない。お前と飯を食いに行くまでそこまで思い至らなかった。」
不機嫌な理由。

「え、どういう意味・・・。」
結城の想像以上の想定。
でも、その答えをくれるわけもなく。

「そろそろ落ち着いて来た頃だろうからさ、いなくなった方に免許が有るかないか、こっそり見てきてくれる?もしあったら、車を所有しているか・・いや、あっても自分のは使わないか・・、レンタカーの類も確認して。」

「はい、わかりました。浅霧さんは?」
「・・・」
答えがないことが答え、結城は自分のコーヒーを飲み干して出ていった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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