Disclose8

文字数 551文字

結城はすぐにでも話を切り上げたかったが、「早くして」という催促がなかったので、同じ質問の3巡目をすべて終わらせることにした。

結城はこの取り調べの時間があったので途中で追い出されてしまったが、さっきまでの時間で浅霧が色んなことを吸収して頭の中で作戦を練っているのだろう。

それに、結城でもわかる。

江尻がじれてきて、余裕が感じ取れなくなってきていた。

その証拠に、あと2~3個で最後の質問になるというとき

「あの、同じこと何回確認させられるんですか?」
と、明らかに苛立った口調で言い返してきた。
その目は、結城じゃなく浅霧を凝視している。

浅霧は浅霧で視線をそらすことなく

「後少しですよ。準備運動は丹念にやらないと、怪我するって先生に習いませんでしたか?」

と、しれっと言い返した。

浅霧はふと振り返って

「水、持ってきてあげて。」

と、いうと記録係が近くに控えている別の捜査員に伝達しに出ていった。

「水なんていりませんよ。」
そういうと江尻は視線をそむけた。

「まあ、そう言わないで。」
そういうと、持ってこさせた水を江尻の前に置いた。

「ペットボトルじゃなくて申し訳ないね。まあ、それでも最近この署にも導入された給水器の水だから、まあまあ美味しいよ。」

と言っている。

正直、あの手の水はなぜか美味しく感じる。
水って本当に不思議だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み