Disclose38

文字数 608文字

その登り口へと傘を差した人が足早に駆け寄ったところが映っていた。

メガネの辺りにカメラが着いていたので、それらを車の移動に合わせて覗き込むように見ていく様がガラスに写っていた。

その光景を不思議に思ったのか、それとも気が付かずに言ったのかわからないが、父親が

「今この雨の中、歩道橋のを甫みたいに傘も差さずにあっちの方に歩いてったやついたな。若い連中はこんなに雨降ってても、傘よりもカッパがいいのか?」
と言っている。

今どきカッパなんて言わない、レインコートとかポンチョとかっていうんだよ、と父親を茶化す。

そういう発言は、普段は仲の良い親子なのだと連想させる。

映像の解析は終わっていて、確認したところ甫が目で追っていたのが被害者である森宮で、偶然父親が見かけたのが阪本だったと思われる。

「なんかあったのかな?」
と事態を知らない父親のセリフ。

「さあ、足元が悪くて転んだんじゃない?」
と結果の声が入っている。

甫は後ろを気にしているようだった。

そこからどう走っているのか、画質が振動で揺れ雨も降っているのではっきりとはわからないが、数分後

「5000円超えたぞ。」
と父親が言うと、そろそろ家に向かおうよと結果が答えた。

しばらくするとタクシーが止まった。
お金を差し出す甫の腕が見える。

「釣りはいいからさ、2時間位したら戻ってきて。うちに帰るから。」
と言って降りていった。

「まあ、俺が来れなかったら誰かよこすよ。」
と言って去っていった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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