ACT56

文字数 670文字

相手は管理官だった。
「浅霧さん、全部説明しに一旦ここまで戻ってください。いいですね。」
といって、反論する暇もないまま切られた。

「申し訳有りません、伝えきれなくて。」
と、彼女がしょんぼりしている。

この構図では自分がいじめたかのような印象に見えてしまうのは流石に嫌なので浅霧は自分から班長に電話を掛けた。

「管理官がおかんむりだ。一度、こっちの戻れないのか?」
と、言われた。

それに対する答えは持ち合わせていないので、今日起こった事を簡単に説明して、やってほしいことを一方的に伝えると、なんかギャアギャア言い出したので切った。

こういう時に結城がいないのは面倒だ。

その結城からは、
『メガネを外しました』
『島田と合流出来ました』
『島田が人着を確認、江尻に間違いないそうです。』
『インフォメーションへ寄ったのでここで島田と別れ確認させに行かせました』
とある。

メガネは「ある」か「ない」かで印象の違いは雲泥の差がある。

警察は割とその辺の違いを日々意識している職業だ。

刑事の勘とかよくドラマで言うシーンがあるが、それは日々先輩について歩き、怪しい人物についてOJTを受けている蓄積があるからだ。

仕草から入り、常習者に関しては歩き方や目つき癖なんかも教わる。
人によっては、言葉でいちいち教えてくれない人もいる。

犯人や容疑者の後ろ姿を見ながら、そんな対峙する相手の心理を学んでいったチリツモが刑事の感だったりするのだ。

メガネやマスクをしていても見えている場所の見ている所が違うので、すれ違って似ていると思えば、裏取りをし、逮捕に結びついたケースも少なくないのだ。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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