ACT91

文字数 516文字

情報の提供の代わりに、比留田医師は捜査に条件を色々と付けてきた。

浅霧の得意な分野じゃないので、重要な範囲を過ぎ交渉に入ったタイミングでいいように管理官へと受話器を渡すと、さっさと部屋を出てしまった。

文句を言いたいのを抑えながらも、やり取りに興じている。

結城も三井も島田も、そんなことを横目に気付かれないように浅霧のあとを追った。

「わたしたちが接触しなければ、彼は動かなかったということですか?」
と、まだ捜査一課の刑事になりたての三井にはショックな出来事だったようで、少し落ち込んでいる。

「まあ、いつか忘れてた頃に・・例えば、中西が回復したりすれば、小さくどこかで扱われて、それがトリガーになって何かが起きていたかもしれないけどね。」
と、少し優しい口調で浅霧が話す。

一応、性別はともかく期待性のある新人にはすこし気を使うらしい。

『僕にもたまにはそのくらいの優しさをくれたって』
と、結城はちょっとふてくされながら付いて歩く。

それでも、浅霧と一緒に行動することは色々と気づけ無いことに気づかせてくれるので、媚びへつらって歩き回るよりも何倍も価値を感じていた。

「これからどうすればいいのでしょうか?」

「そんなことよりも、アレ、どうだった?」
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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