ACT92

文字数 750文字

浅霧たちが、バタバタとしているときよりも遡ること数時間前。

御幸は病院での報告を受けて動き出していた。

江尻は中西が生きていると知れば、動くだろうしもし病院までやってくることがあれば、仕留めに来るだろうと予測ができたから、中西が入院してからずっと様子を見ながらもケアしていた。

浅霧の方も、彼が関われば多分何も言わずとも病院に来るだろうと思っていたが、面白いくらいその通りになってくれるのがいい。

こっちがセッティングしなくても警察だから誰かしらとコンタクトを取ることは想定できる。

そこで比留田医師にちょっと言っておけば彼は勝手に自分から挨拶をしに行くだろうと想像していた。

それもそのとおりになった。
まあ、過去の経緯があったとしても御幸には関係がないのだが。

あの日、浅霧たちが去ったあと、中西を別の部屋へと移動させ、江尻が持ってきた花を窓際に飾った。

嫌味な花言葉だけじゃなく、この花の中でこの青い花は1本だけ目立つので、夜目にもわかりやすい。

きっと、病室に入ってもすぐに薄明かりでこの部屋で間違いないと確信できるだろう。

彼が行動するとしても、いつ回ってくるかわからない巡回の合間をぬって行動を起こすなら、少しでも目印があれば時短できるからだ。

その一環もありやつは、中西が別の人間と入れ替わって横たわっているなんて考えてもいなかったようだ。

一応念の為に、夜目なら騙されるだろう似ている人物をベッドに寝かせておいたのだが、江尻は布団をめくってまで確認しないだろうと御幸は考えていた。

ただ比留田医師から、患者さんに危害が加えられると困ると言われていたのでそれをのんでバレにくい方法として準備した。

そういう気遣いはできる。

江尻がやってきたのは、面会の時間が終わり夕食の時間が過ぎ、殆どの部屋で落ち着き出した頃だった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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