その91

文字数 566文字

すると、あのときタクシーを降りた病院の門が見えてきた。

暗くなってからなんて病院に来たことがないので、ちょっと新鮮な気分だ。

割と大きい病院なだけあって、ライトアップされていてどこか要塞のように見える。

行きに車で走らせたとき、ここまでたしか4~50分くらいで着いた気がする。

電車では何回か乗り継がないとたどり着けないこの場所も、幹線道路の延長にあったのだと今頃気づいた。

東京は案外直線距離だと近いところも、乗り換えなどでかなり遠い場所になることもある。

羽田空港なんかがいい例だ。

地図で見れば、「なんだこんなところ」にと思う場所にあるが、そこに行き着くには、電車で行くなら浜松町からモノレールに乗るか、品川あたりから私鉄で行かなければならない。

まあ、バスなら大きい駅だったら直通もあるが結構な時間がかかる。

なんだかんだとタクシーが一番楽だという同僚もいるくらいだ。

同じ地域でも駅名が違う場合なんかもあるので、なれるまで大変だったことを思い出した。

流れでそのまま駐車場へと滑り込む。

さすがにもう、面会の終了時間なのでかなり空いている。

診察は、夜間診察側だけのようで、メインの出入り口の照明は少し暗めになっていて、先日来たときにいた受付のあたりにも人影は見えない。

駐車スペースを半周したあたりで、なんとなく中西の事が気になったので車を停めた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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