ACT4

文字数 689文字

抜け目 のない御幸は高橋のことを、
「僕の友人」
だということを認識しているのかもしれないが、しがない喫茶店の店主である高橋は、会ったことがない人間を認識しているとは思えない。

御幸は割と金持ちの家の人間で、慈善事業とかもしている傍らで、
「なんでも屋」
という名前で事務所を出していて、気分が乗った仕事だけを受けて動く変わりものだ。

そして、それに自分が面白いと思った依頼に関してはお金を取らない。

一応、事務所も構えている。
割と、有名なところの裏通り。

区画整備から、まだ若干逃れられている裏通りの、雑居ビルの2階にある。

しかもビルは、家族の誰かの持ち物で遊ばせておくよりいいからと使っているらしい。

1階には老舗のそば屋が入っていて、なかなか美味かったのを覚えている。

上の階や同じフロアにも幾つか個人の小さな会社が入っているようで、時々事務所へと向かう階段あたりですれ違う。

いつも同じような顔ぶれなので、このビルの勝手がいいのだろうと推測される。

普通なら、何の仕事をしているのか分からないような事務所があるのに、皆が文句を言わないし出ていく人がいないのは、大家のような立場なのに加え、近所の貸し物件より若干安く借りられるらしいからなのかもしれない。

まあ、そういうわけで、そういう経費がかからないとは言え、それでも何人か人を雇っているのに、少なくとも俺からはお金を取ったことが無いから、一度だけ聞いたことがある。

でも、御幸は笑いながら、
「お金は取れるところから取っているから大丈夫」
なんだとか。

でも、詳しくは聞いたことは無い。
そして、それ以上深堀りするのも、野暮だからそれ以来聞くこともない。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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