第257話 妄想について

文字数 398文字

 妄想は、私の得意技の一つだ。

 それは私を苦しめることもあれば、楽しませることもある。

 その「こと」が起こっている間の時間、私は精神的に七転八倒したり、ひとりでニヤついたりしている。

 そして「こと」が妄想通りに運ぶよう、その「こと」に自分を現実に当てはめようとしたりする。楽しい妄想の場合は特に。

 が、その妄想に現実を当てはめようとする時、すでに妄想の時間は過ぎているのだ。

 現実に、たとえば恋人と駅で待ち合わせ、妄想、それまでしてきた妄想通りにコトが進むわけがない。

 … この頃私は、妄想の真っ最中、またはそれが終わった時間に、「ああ、こんないろいろ、考えることができてシアワセだなあ!」みたいに思うようになった。

 いや、ほんとに、考えられる、考えることができるというのは、ほんとにシアワセといっていいほどのものなのだ。

 そんな時間に、ほんとに感謝する、みたいな気持ちになる。

 ふしぎなことだ。
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