第47話 木を切る

文字数 1,065文字

 裏庭のティーツリーが伸びたので、切ろうと思った。
 どのていど切ったらいいかなぁ、と玄関から裏庭へ行く途中、草の中からガサガサと音が。
 なんじゃらほいと見れば、白黒の猫。わりと小さめで可愛い。でもたまに庭でう〇ちをするヤツだな、と思いつつ見ていると、ラティス(家の、外の土手との境界線に沿って作った弱いカベです)をガリガリやって、外へ逃げようとしている様子。そんなに慌てなくていいよ、と笑って見ていたら、猫もジッとこっちを見ていたので、そのまま放っておいた。

 大体ここら辺で切るか、と目星をつけて脚立を設置、ノコギリを取りに物置へ行ったら、さっきの猫が悠然と玄関の方へ歩いているのが見えた。ああ、竹フェンス(家に出入りする際の、土手と庭の境界線に作った外玄関のようなものです)を抜けて外へ行くんだな、と思って見ていた。
 だが、猫は家の下駄箱のある玄関の方へ入っていった! そして「伏せ」の体勢から、くつろぎの体勢になり、すっかり玄関先でリラックスしている。可愛いなぁ、と思いながらこちらはこちらの仕事。

 ギコギコ木を切り、汗だくになって枝などの処理をした。とにかく、ほんとに暑かった。こりゃ猫も日陰で休みたいわな。
 しかしほんとに木を切るというのは勇気が要る。せっかく伸びてくれたのに、申し訳ないと思う。でも台風とか来たら、やっぱりヤバイんだよな。
 でもこのティーツリー、メラレウカとも呼ばれるが、去年も同じくらい切って、元気にまた伸びてくれた。大きく育ってくれるのはありがたい。でも切らねばならぬという、この矛盾!
 ここら辺で切っていい? などと、ツリーに聞きながらノコギリをあてる。
 いいけど、あんまり切らないでよ、痛いんだから… と、言われたような、言われなかったような。

 昔、アマゾンだったか、それっぽいところで、その地域に住む人たちは魚をとって暮らしていた── でもそこは魚がたくさんいるので、大型のとんでもない漁船が来て、魚を根こそぎ取っていってしまった。以来、魚がほとんどいなくなった、というドキュメンタリーをテレビで見たことがある。
 よくあんなことができるよと思う。あんなことするくらいなら、その前にチャンと現状を伝えて、こういう理由でもうこの魚は市場に多く出ません、と言ってくれたらいいと思う。
 たぶんダンボールとかワリバシとか、ずいぶん森林伐採も続いてるんだろうなと思う。
 思う思うで、結局何も変わらないのかなと思う。

 とにかく家の庭、あと月桂樹が。
 適度に、適度に切っていこうと思う。何事も、きっと、適度が。
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