第18話 ゴールデン・ウィーク

文字数 698文字

 天気がよかった。いつまでも、ねていられない。タバコもきれた。
 多少ビッコをひきひき、往来へ。コルセットつけると、けっこう歩ける。やっぱり空の下は気持ちがいい。青一色の空!
 曲がり角で、観光旅行者らしいひとりのおじさんとすれ違う(私もおじさんだが)。目が合ったので、「こんにちは」。「あ、こんにちは」。あいさつ、返してくれた! ああ、気持ちがいい。
 知らない人と、あいさつしたのは久しぶりだった。
 ホー、ホケキョとウグイスも鳴いていた。
 川の橋のところで水面を見つめる。おや、おたまじゃくしが。
 その横を、小魚がちいさく群れて泳いでいた。ああ、サギがパクッ!と食べているのは、この魚か。
 モーモー、とウシガエルも鳴いていた。
 いやー、いいな、やっぱり。

 タバコを買い、腰痛の薬も買い、サンドイッチを買い、ビールを一本買った。何日ぶりのビールだろう。十日以上? こんなに断酒したのは、何十年ぶりだろう。そんな、飲みたくもなかった。
 久しぶりのビールは、そんなに美味しくなかった。飲めて、嬉しいとは思った。
 歩いて五分ほどのところにあったスーパーが閉店してしまったので、買い物に行くのに最低十五分かかる。不便になったといえば、不便になる。それだけ歩くことになるから、身体によさげだといえば、よさげになる。
 ただし、重い物を背負うのは… まぁいい、自転車という文明の利器もある。
 あまり、わるいことは考えまい。(ようにしたい)

 しかし、おたまじゃくし。さかな、サギ。
 共食いとかして、食べられたりして、でも、それ以上には行かないんだな。
 生きるために、生きてるんだよな、かれらは。
 よかった、よかった。
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