第206話 ソクラテスさん

文字数 812文字

 あなたは、よくやった。よく、考えた。
 ということを、2500年くらいですか、あなたが生きていた頃から数えて、ぼくは知ったつもりでいたりします。

 プラトンさんのことは知りません。
 ソクラテスさんのことも、実はあまり知らないのですが、今、それっぽい本を読んでいて、あなたには強い共感を覚えます。

 なぁんだ、オレ、自信もってよかったんじゃん、などと、だいそれたツケアガリを感じたりします。
 実はぼく、定時制高校時代、クラスメイトのひとりから、「ソクラ」と呼ばれていました。

 けっこうマセガキで、テツガクみたいな言葉をよくひとりごちていました。
 通わなかった中学の卒業文集には、「人間の幸福について」を書きました。
 形而上の、いろんな言葉を駆使するだけの、つまらないものでした。まぁどうでもいいです。

 ぼくは、性癖として、ねちょねちょといろいろなことを考えて生きてきました。
 何も自慢できるものではありません。誰でも、していることです。

 しかしソクラテスさん、あなたにはほんとうに共感することが多い。
 あなたの考えていたことは、ぼくには、うなずくことしかできません。

 ぼくが本を読むのは、「ぼくはひとりじゃないんだ」という確認をしたいという動機が、かなりの位置を占めています。
 ぼくは、不安なのです。共感できる相手がいてくれたら、ぼくは、ひとりじゃないと思える。

 あなたは、たぶん、あなたであり続けた。
 そこに共感するぼくは、ああ、ぼくは、ぼくで、いい、と思うことができます。

 思想なんて大袈裟なものではなく、考え方、考えの道程、それが、おそらく、あなたにあてがわれた生命というものだったように思えます。
 あなたは、それを、まっとうしたわけです。

 ほんとに、「結果、結果」と、そんなものばかり求めるのは、違いますよね。
 考えること、なんですよね。それも、相手に分かり易いような言葉で伝えるということ。
 考え続けさせていただきます。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み