第281話 10月16日

文字数 1,005文字

 俺、平和な世界、つくり方、知ってるよ。

 一人一人が、しっかりするんだ。哲学を持つんだ。でも、人間であること、人類ってやつ、この生き物に満ちた世界の中で、「人間」と区分けされた生物として、生来備わっている「考える」性能を、存分に駆使するんだよ。必ず、意識するんだ。この、人間であるということを。

 何千年もの間、生存、続けてきた人間として、を意識するんだ。

 何のために生きて来たのか? 個であるとともに、人、「集」でもあってさ。この集、あつまり、なぜ、どんな世界を人間として創造するか。どんな世界を、この人間の集まる世界で創造していくか。

 争いのない、平和な世界。けっして、争いのない世界。それを。

 一人一人、勝手にやっていい。でも、哲学をもって、しっかり生きるんだ。あの理想の世界、平和な、春の穏やかな海そのもののような世界をつくる。それを目的… そのために、人間、人類ってやつ、生まれて死んでをずっと繰り返して来たんだ。

 もう、争うのはやめようよ。やめようじゃないか。繰り返すのはやめようよ。

 個人の生死は繰り返す。でも人間、人類ってやつは続いてく。続いてきた。

 少しは、進化しようよ。ほんとうの、進化をしようよ。

 人を批判することもない。責めることもない。一人一人が、各自、自分の生を生きるんだ。それでいて、人間、人類であること、あの平和な世界をつくることを忘れない。これだけは、けっして忘れない。そうして、一人一人が、ほんとうに考えて生きるんだよ。

 その人がほんとうに考えて、その人として何かをやったとする。その人は、しっかりやったんだ、それを。そのことを、認める。認めるんだ。自分だったらこうするのに、なんて思わないで。

 その人の、全力だった、と。認めるんだ。一人一人が、そうなんだ。そうして、信じあって、生きるんだよ。神も仏もないよ。あるのは、人間だけなんだ、この人間って世界の中では。

 ひとりひとりが、個であると同時に、集だ。群だ。この二つのもの… これを意識するのは一人一人だ。でも、この個と集、それだけでなく、「あっちの世界」、平和な世界、ほんとうに平和な世界を創造する、つくる、それへ向かうことができる、このことを。この「三つ目の世界」のことを、必ず忘れずに。

 時間がかかるよ。また何千年もかかるとしても、それを目指していくんだ。そうすればきっといつか、ほんとうに平和な世界が… 来ると思う。
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