第51話 期日前投票

文字数 941文字

 駅前ではうるさい候補者が立って何か言い、その取り巻きがビラを配る。こんなことして、何なんだコイツら、とどこかで思う。静かな方が好きなんだけどナ。
 どうせ自民党の圧勝でしょう。ムダだなぁ、と思いながら期日前投票をした。
 去年、ぼくはミスッた。「民主党」と書いたのだが、「国民民主党」と「立憲民主党」と、二つの政党がある。そして投票にあたって用紙に書く政党名の「略式政党名」は、国民民主党も立憲民主党も、同じ「民主党」なのだった!
 勉強不足というか、政治なんか勉強する気もないのだが、同じ名前で二つの政党があるって、紛らわしい。そして今年も投票所の書くところで確認すると、「略式名称・民主党」で、同じなのだった。

 去年も選挙なんか行きたくなかったから、自民党以外だったらどこでもいいや的に投票したのだが(ウヨク的な党、宗教の党もイヤです)、結局たしか僕の一票は国民民主党に0.5、立憲民主党に0.5、と「集計」されたのではなかったか。
 今年は、絶対政権なんか握らない、昔からある「平和」ばかりをうたっているような〇×党に入れてしまった。ほかに、ないんだからしょうがない。

 いくらキルケゴールが「絶望のなかに希望がある」といったって、政治、絶望しかないような気がする。いや絶望も失望も、「望」の切れっ端もない。といって、民が何かするわけでもない。すみません、僕も何もしていません。
 いかにもケッパクそうな、ワタシ、ワルイ人ジャアリマセン、みたいな顔した「党首」は信じられないし、といって、いかにもヨゴレテイマス、というのもいけ好かない。
 とにかく静かな街に、ガーガーがなり立て、通行の邪魔になるようなビラ配りはやめてほしい。うるさい中に、平穏なんてないんだから。

 しかし投票、これほど不毛なことはないんじゃないかと思えてくる。
 特に奈良なんか保守的な人が多いらしい。こないだ東京のほうに行って、こっちに帰ってきた時は「のんびりしてるな、ほんとに」と好意的に実感したものだったが、経済回してるのはほとんどが老人で、その老人のほとんどが自民党支持らしい。
 そう、自分の一票なんか、絶対反映なんかされないし、どうにでもなれ、と思う。
 かなしいような、むなしさの確かにあった、期日前投票だった。
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