第329話

文字数 892文字

 結局、六泊したのか! 義父母の家と実家。
 とにかくあれは二日目の夜だったか。救急車を呼んで。やっぱり老人ホームに入って頂くのが良いと思えるが… これは義姉の決めることで、ぼくらには意見しか言えない。意見も言っていないが…。
 とにかく役割は果たしたと思う。
 実家では、楽しかった。やはり哲学的、心理的な話ができることは嬉しい。ただ事象を吟味、それぞれの立場、存在からものを言っているにすぎないが。
 義姉の死から二ヵ月。まだそんなもんかとも、そんな経ったかとも感じられる。とにかく時間が経った。
 家の歴史、考えられる、見える、見えた、知り、知った範囲でのことに限られる歴史。祖父のことなど全く知らない、どんな人かも知らなかったが、ずいぶん立派な人であったらしい。
 姪夫婦はどうなるものか。マモル君の意思を聞こうともせず、親の身勝手さばかりで何が教育か。

 しかし板橋には四泊させて頂いたのか。蓮田に二泊。お世話になりました。兄と連夜、話し、昼間は将棋も指した。将棋は面白い。またぜひ、お手合いを願いたい。その話中、カラマーゾフのことが重く入ってきた。あれは重要な本であるようだ。もう一度、読み直そう。長いが、おそらく自分に最も必要なこと、問題が提議されているはずだ。ドストエフスキーの中で、一番読んでいて面白かった本でもある。キルケゴールとニーチェは、その合間に読んで行こう。
 大手町経由で東京駅に行くのが楽であること。時間的にも、この方がいい。あの丸の内のみどりの窓口は感じも良い。また三ヵ月後か一ヵ月後か、蓮田、板橋にまた行こう。あ、徳島にも。まったく、生きてる限りにできることだ。
 小説… やはりあれはムリだ。「あの時」は「あの時」。どんなに思い出し、当時のことを詳細綿密に書こうとしたところでだ。「今」が介入してくる。「今」から離れることはできない。事実は事実として。過去は過去として。考える今は、今として。その時、その時でしかない時間なのだ。書けるかな。とにかく、こんなところだ。「戦時下であること」はとにかく続ける。しかし、こんなことを書く! そして公開! ばからしくも思う。
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