第20話 ボノ…

文字数 782文字

 アイルランドのロックバンド「U2」のボーカル、ボノが、あの戦時下の国の地下鉄でサプライス・ライブをしたというニュースを見た。
 短い映像だったけれども、「あなたたちは自由のために戦っている。私は尊敬する。この国だけに限ったことじゃない。自由、われわれの自由のために、戦っているんだ、あなたたちは…」みたいなことを言っていた。駅のホームで、たまたま居合わせた人たちに向かって、そして歌を歌ったんだと思う。

 おい、ボノ、何言ってんだよ、と僕は思った。
 自由のために、戦ってるわけないじゃないか。政治家どもが勝手に始めた戦いであって、地下鉄のホームに居合わせた人たちは、一刻も早くこの戦いが終わることを望んでいるんじゃないのか。
 それを一体、何考えて「励まし」てる気になってんだ。もう、いっぱい、がんばってるじゃないか。これ以上、がんばれ、みたいなこと言うなよ。

 U2は好きだったけど、ボノ、おかしくなっちゃったなあと思った。
 それこそ軍隊の、兵士たちの集まっている場所で、ああいった「士気高揚」みたいなライブをするのなら、まだ、わかる。(それもバカげていると思うけれど)
 それを一般市民の前で、いかにも平和主義のトリックアートみたいにメッセージソングを演奏するなんて、全然、民のほうを向いていない、ボノのひとりよがりな自涜行為のように僕には思えた。

 とにかく、どうして止められないんだろう、というところへ行く。
 経済制裁だの何だのと、腫れ物にさわるように外堀から埋めていったって。
 核があるから? その抑止のための核だったんじゃないの?
 いろんな国の首相なんかが訪問して、「励ます」「応援する」意味も、よくわからない。
 

いるようにみえる。

 オカシナセカイダナ、と思う。だから、生きてく勇気が必要になると思う。
「勇敢に戦うこと」、それだけが、勇気ではないと思う。
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