第8話 三年目

文字数 1,815文字

 ネットのサイトに投稿を始めて、三年が経つ。
 三年は、とにかく書き続けようと思った。「世界のホームラン王」王貞治が、「とにかく三年、ガムシャラにやりなさい」とYouTubeで言っているのを見たからだ。(この安直さよ…)
 王さんはもちろん野球の、しかも若い選手に向けて言っていたのだが、僕はそれを「書くこと」に置き換え、「三年やってダメだったら、あきらめよう」と、ちょっとした決意をしたりした。
「ダメだったら」とは、どういうことだったか? 芽が出ない、ということだったろう。「芽が出ない」とは? 出版依頼(!)が来たり、それなりのリッパな作品を書け、「世に出る」という形が、芽が出る、ということだったろう。
 だが、それよりも、期限を決めたかったのだろう。いつまでも、だらだら書いていても、仕方ない。とりあえず「三年」という期限を定め、その間、ガンバロウ、としたかったのだと思う。

 そして「ガムシャラに」といっても、毎日毎日、野球漬けならぬ創作漬け、とは行かなかった。
 半月くらいサボッていた期間もあったと思うし、ブログをこちらに引っ越す時など、何も新しいものを書いていなかった。投稿した文の、些細な部分を書き直したり読み直したり、こんなことをしていても仕方ない、もう辞めようと思ったことも何回かある。
 とにかく三年が経ったのだ。
 野球つながりで、また書けば、広島カープの元選手・前田智徳に憧れていた。ヒットを打っても、「自分の納得したものでなければ、全然嬉しくない」という、あの求道的な姿勢。ロマンを感じた。オトコラシイ、と思った。
 で、やはり安直な僕は、PVとか、いいね!に惑わず、自分の納得するものを書こう、と、心掛けたりもした。その心掛けだけは、今も保っているつもりだ。

 結局、この三年のあいだ、自分がほんとうに納得して書け、それが結果的にケッサクになった、というようなこと(主観と客観の一致。これがイチバンの理想だった)は、なかったと思う。
 書くことに限らず、何をしてもそうだ。何かにチャレンジして、見えてくる、分かるものは、いつも「自分自身」だ。巨大な作品は、僕には書けない。それが分かっただけでも、続けてよかったと思う。僕にしか実感として体験できない、確固とした「体験」だった。
 三年続けて、たいしたものも書けないのだから、もうアキラメよう。とは思わない。何のために? は考えるけれど、それはそれとして、書くことは、続けていければと思う。無形の気持ちに、形を持たせるように、その形と気持ちが一つになれるように、こつこつ、やっていければと思う。

 もっと、いろんな作品を読んで、レターを書いたりして、交流してやっていけたら、楽しいのかな、と思う。だが、レターを書くというのは、ほんとうに難しい。自分の作品!を書くことを、結局優先してしまっているのだと思う。
 ほんとうに、Aさん、Mさんの素敵な作品にも、読んでいながら、なかなかレターを送れない。
 勝手に紹介(?)する形になってしまうけれど、申し訳ない、Tさんも、僕の「お気に入り作家」の一人で、その詩集を目にした時、胸にふかく入ってきた。「朝が来ない夜」という詩集だ。
 詩は、僕には疎い世界で、詩の本も読んだことがなかったけれど、まっすぐ心に、何の異和感もなく入ってきた。目にする言葉以上のものが、確かに感じられて、嬉しかった…。

 そう、ほんとに、いろんな作家さんがいらっしゃる。自分だけの世界に躍起にならず、いろんな方と、やいやいやるのが、やれるのが、投稿サイトの楽しみ方でもあるだろう、と思う。
 が、結局カッコつけてるんだと思う。どこか、「構えて」しまうのだ。失礼にならぬかとか、こんなこと書いたらどう思われるだろうかとか、そんなことばかり気になって、積極的に交流ができない。Мさん(すみません)とは、ながく?おつきあいして頂いて、ありがとうございます、としか言いようがない。

 なろう、カクヨム、アルファポリス。こないだ「なろう」をチラと見たけれど、異世界ファンタジーが相変わらず強そうだ。この「ノベル…」は、比較的年齢層が高いのか、落ち着いた作品が多い感じがして、投稿サイトの中ではめずらしいような気がする。利用者も、少ないような気がして、運営は、大丈夫だろうかと思ってしまう。
 そう、こんなふうに、だらだら書いてきてしまった、というのが、この三年間だったように思う。
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