第194話 やっぱり違うなァ

文字数 1,357文字

 苦手なもの、不得手なものに挑戦すること… それがこんなにつらいとは、と実感している真っ最中。
「違う自分になろう」としているようで、またそうなろうとしているのが本人なのだから、自分はどこに向かっているんだろう、と袋小路にハマることになる。空へ飛ぼうとしても、内から足枷に繋がれているから、また地面に戻される。
「お前はそっち側の人間じゃないだろう」鎖が言う。重力、この身がある空間から、言われている気もする。
「違う自分」とは、それまでの自分ではなくなること。
 トヨタの工場で仲良くなった友達は、上司から「お前はこういう自分になれ」といわれ(上に立つ人間としてこういう人間になれ、と)、でもそんな人間になりたくなかった彼はトヨタを辞めた。それから彼は地元の大分に戻り、コンビニの店長になった。

 別の職場で親しくなった友達は、若くして役職に就いたが、どうにも辛かったようで、また現場に戻った。給料も安くなった。それでいいと思ったが、まわりから奇異な目で見られ、ぎこちなく、やはり辛いようだった。
 二十歳の頃に世話になった予備校講師から聞いた、こんな話はかなり胸に入ってきた。
「知り合いに、ちょっと変わったヤツがいてね。会社で、まぁ上の立場に立つように言われたんだけど、上に立つと、(部下の)評価をしなければいけない。で彼は『人間が人間を評価することなんかできません』って言ってね、そのせっかくの昇進を拒否したっていうんだよね」
 おかしそうに微笑みながら、その意気やヨシ、というふうに話してくれた。

 公教育から子どもを引き上げ、公務員のような仕事を辞めて、埼玉の山の上で農業や養鶏を始めたSさん。数学が好きで、好きな数学のために、またその面白さを伝えたいために、予備校を利用するようにして生きてきたKさん。
 天気のいい日にビルの中にいるのがイヤで、入社まもなく退社届を出したTさん…
 今まで、親しくなった友人たちのことを思えば、「自分」に重きが置かれていることが分かる。アウトローみたいに生きている人が多かった。いや、そういう人としか、仲良くなれなかった。

 今自分がやろうとし、実際始めていること… ブログのアフィリエイトで少しでも稼ごうということ、これは確かにチャレンジではある。しかし、それをしている自分自身に、ずいぶんなムリがあることは、始める前から感じていた。
 ピュアでない。その意識もある。お金稼ぎを意識すると、全然書けない。書くそばから、吐き気さえ催す。しかし、ピュアとは何ぞや。
「違う自分」になることは、ムリなのか、と痛感する。そんな自分になれていたら、とっくになっていただろうとも思う。
 だいたい、こういう目的でブログを始めようとして、そのやり方をネットで調べているうちに、もうイヤになっていた。
「これで私は〇百万稼ぎました」「こうすれば儲かります」…
 違う、違う。オレのやりたいのは、こんなことじゃない。
 でも結局、少しでも稼げればと思っていた自分がいる。なんだ、同類じゃないか…

「何も考えないで書く」なんて、できやしない。
 お前は、何がしたいのか。
 お金ばかりを目的とすることに、ずっと反発してきたじゃないか。
 方向が、間違ってやいないか。
 どうしてそんな、矛盾ばかり…
 ぐるぐる回って、地球も回る。
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