第275話 ありがとうございます

文字数 1,067文字

 暑い。

 駅前のスーパーへ行く。今夜は蕎麦にしようと思う。ネギがなかったのだ。土日はポイントも二倍つくから、広告の品のマヨネーズやフンドーキンの胡麻ドレッシング、キッコーマンの醤油など、備蓄品も購入する。

 レジへ。五、六台あるレジのうち、空いたのが一つしかなく、そこへ。いつも見かけるレジ担当の婦人だが、会計してもらったのは三、四度しかなかったと思う。だが、行ったら、「こんにちは」と言われた。

「こんにちは」私も返す。「暑いですねえ」と婦人。

「暑いですねえ」と私。「いつまで続くんですかねえ」「まったくねえ」

「でも、お元気そうで」と、掌を少し彼女に向けて笑って言う。婦人は、「いやあ、何も考えることあらへんもんで」みたいに笑って仰る。

「あ、それがいいですよ」と私も笑って言った。で、「ありがとうございます」「ありがとうございます」と言い合って、別れた。(別れた?)

 義務的な対応の多いスーパーなのだが、こんな気軽に挨拶をされるとは思わなかった。なんだか、ちょっと嬉しかった。

 ついでに言うと、その婦人はあまりパッとしないというか、こんなこと書くと失礼だが、前に一度レジ袋を忘れられたこともあって、あまりこの人のレジには行きたくなかった。

 でも自然体というか、そんなに気張らず、だからシャキシャキしていないといえばしていないのだが、店もそんな混んでいなかったし、何となく落ち着いて世間話みたいなこともできたのかもしれない。

 そう、気張らず、やることをやって、マイペースで働くのが一番なのだ。

 社会参加していないような私には、こんなチョッとした会話も嬉しいものだった。

 ついでに、家人の好きな塩大福を買いに、商店街へ。観光客で、すごい人出。ちょっとだけ並んで、塩大福を買う。少し待っている間、おみやげコーナーの客のために待機しているような婦人が、大福コーナーの後ろから私をニコニコして見ていた。目線が合って、私もちょっとニコニコ。

 こんな、ちょっとしたことが、嬉しいものだ。

 ついでのついでに書けば、物を買い、お釣りなどを渡されるような時(その場を離れる時)、私は必ず「ありがとうございます」と言うようにしている。すると、相手もちょっとビックリする時もあるが、たいていは気持ち良くなってくれるものらしい。少なくとも、あまり悪い気にさせるものではないらしい。

 こないだはどこかの店で「ありがとうございます」と言うと、ちょっと驚かれた後、丁寧にお辞儀をして下さった。イヤミのない、いい店員さんだった。

 いい言葉だと思う。ありがとうございます。
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