第27話 あるイメージ(2)

文字数 1,111文字

 あとは、知らない。
 そののあと、── 気がついたら、「私」という「個」がいた。まわりには、「他」という個々もいた。
 から、星が数多(あまた)生まれ、宇宙と呼ばれるもの… それを

者らが生まれた。
 その間のことは、知る術もない。
 もし、その… 無じたいが、何ものかが創ったとして… からを生み出したものがあるとして、かれはこう言うだろう、
「あなたがたに理解できない、分からないことは、あなたがたには知る由もありません。あなたがたが分からないことを、わたしが説明したところで、あなたがたは分かりません。
 あなたがたは、あなたがたに

ことだけしか、わかりません。あなたがたは、今、あなたがたの仕方で進化しているんです。わたしは、ああ、こうしてこの星の生命は育っているのか、と、見つめるだけです」

 そして、かれはこちらの理解できることしか言わないのだ。
 つまり、言い古されたこと── この宇宙(と呼ばれるもの)には本当に沢山の星があり、高度な知的生命体があり、タイムマシンがあり、この世とあの世の行き来も自由な生物があり、文明の発達のために滅んだ星があり── 善心だけでなく、悪心にみちたヒトガタの生命体もある、とかいうことしか。
 すると、善/悪というのは、誰に教えられたものでなく、その星々に住まう個一体一体の内に、すでに備わった、いわば自転する恒星のようなものですか? と、まずしい想像力をもつ「私」が

に問う。
「そうですね」とかれが応える。「一体一体が、宇宙の凝縮、法則化さている自転によって回っている、と言っていいでしょう。モトは、ひとつのところ、から始まったものですが、それが分裂、細分した、と。ココロというのは、その

です。であるから、あらゆるものを受け容れる。まわりからの影響を受けるのは、そのためです。ところが、個体であること、自己、と呼ばれるものに執着した者は、それを拒みます。
 受け容れられないから、戦いが起こります。自己なんて、もともと無かったのに」

 そうですか、と「私」があいづちをうつ。それがこの星の慣習だから。
「とらわれないことですよ」かれが言う。
「頭の中をみてみなさい。過去と未来のことしか埋まっていないでしょう? 今を生きているとか言ったって、頭の中はいつも今になんか無いんですよ。だから、生きてる心地がしないのも当然です。そも、生も死も、あなたがたの頭がつくった想念、観念にすぎません。
 なかったんですよ。なかったんですよ。
 これからもないし、いままでもないです。そう考えて── 考えるまでもないことですが── 気楽にいきなさいな。気に、もともと、楽も苦もないんですけどね」
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