第154話

文字数 773文字

 楽しく、書きたいものだと思う。
 たまに、何のために書いているんだろう、と考える時期が来る。定期的に、そういう波が来る。
 答を、知っているような、知らないような。
 知らない、と書くのは、自分をごまかしている気になる。
 知っている、と書くと、何を知っているのか、追求するべきだ、という気になる。
 追った先には、醜い、見たくない自分がいるんじゃないか。
 そこから逃げるために、どうとでも書ける言葉を駆使しているんじゃないか。
 見たくない自分とは、何だ?
 しばらく、考えた。
 
 いろんな、自分がいるようだった。

、とは?
 あの自分、この自分、その自分。
 「これぞ自分だ」という自分など、いなかった、ということ。
 それが、分かったようだったが、では、何を分かったのか?
 何を分かったのか?
 自分など、なかったことが、分かった、とでも?

「なかったものを、どうして、分かることができるのか?」
 これが自分だと、思いました。そう、決めたんです。
 私は、私を目指したのでした。
 そしたら私、私を追い越してしまったんです。

 私は、私を見失いました。
 きょろきょろして、私は私を、探しました。
 人が、いました。
 この人が、私かなと思いました。
 私は、その人の中に、飛び込みました。
 私は、その人の中にいる私を、私だと思いたかったのです。
 でも違った。

 あいつかな、こいつかなと、私は旅に出掛けました。
 でも、ぜんぶ、私の中の出来事でした。
 私は、私から、抜け出ることができませんでした。

 追い求めていたのは、何だったのでしょう
 私だったのは違いない。
 私だったのに違いない。

 その私は、今、どこにいるのでしょう
 どこにも、いなかったなら
 今も、いないわけですネ。

 もしかして、楽しいのでは?
 行方不明 正体不明であることが。
 … 楽しめるように、なりたいね。
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