第266話 身体に左右される(3)

文字数 862文字

 そう、私の身体は軽いのだ。三、四日前から、妙に軽いのだ。この妙な軽さに、私がついていけない… いや、ついていこうともしていない。この身体であるからだ。

 いや、ついていこうとはしているが、それは「過去の私」についていこうとしている。過去の習慣、と言っていい。

 だって朝起きたらすぐ腹が減り、納豆ご飯をもりもり食べ、あたかも「健康」であったかのような私が、けっこう長かったから。モスバーガーやポテトチップス、ビールだって大好きだった。

 そんな身体が、なにやら変化しているのだ。食欲はない。性欲も、さほどない。睡眠も、この頃はよく眠れる。夜中にトイレに行くこともない、ここ数日は。

 カルピスが美味しい。美味しい水があれば、それだけでもいい。コーヒーとタバコの習慣は、根強く残っている。これも、いやこれこそ、ただの習慣、PCに向かえばこうなるという、習慣以外のなにものでもない。

 まったく、あれこれ考えて書くというのは、不健康だと思う。考えるのが脳の働きだとしたら、これも全く、心臓や血液の流れ、臓器の働きと同じ、「身体のすること」だろう。

 なるべく考えないで書きたいものだが、これも身体の働きであるなら、仕方のないことだ。

 無理に考えないようにすることも、自然に反することになる。

 ただ身体はどうも、生きたがっているようだ。頭で、いくら「死にたい」「もう、やんなった」と思ったところで、しかし身体は、この全体は頭以上に生きたがっているように思う。そう感じる。

 自分を苦しめぬこと。苦しめぬよう、考えること。何も考えないことができないのであれば、せめてこの「考える」働きに、「生きたい」身体の全体を、そっと寄り添えてあげたいものだ。

 そう、べつに健康志向でも何でもないのだ。ただ身体の赴くままに。身体全体が、「知」であるように思う。私は今まで、頭だけの「知」に囚われ、この頭の重みに身体全体が、押し潰され… 圧せられてきたのかもしれない。

 身体は軽い、身体は軽い。そう、軽いのだ。重みは、特に、何も必要としなくていいのではないか?
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